第3講、踊るためのマイク持ち替え(後編) ~マイク持ち替えオタク養成講座~
この講座も3回目です。お付き合いありがとうございます。
当初の予定では3回ぐらいで書き終る予定だったけど、現時点の構想では全5回です。もっと増えるかもしれない…。
前回はこちら。
で、今回の内容は、
持ち替えには「持ち替えで見せたい理由」がある。その、「理由」を想像しよう、というお話です。
前回で紹介したシンメの持ち替えは、その理由が想像しやすい。基本的には「シンメをきれいに見せたい!」というところに着地します。
でも、シンメ以外の持ち替えというのも存在して、そこにも、そうする理由があるはずです。だって持ち替えは、煩わしい、できれば避けたいものだから。
この連載のまえがきで書きました。「オタクとは、そこに自分なりの価値を見出すひと。」です。なにかに着目して、考えて、なにかを見出すんすよ。想像しましょう!
まあそんなわけで今回は、僕の根拠のない仮説がいつも以上に大暴走な回になります。この先に書いてあることに確たる証拠はないんで、ご了承を。
じゃあ、始めます。まずはこちらをご覧ください。
ニューフィクション(ukka)の、
茜空ちゃんの「どうしたらいいのーー!」のロングトーンパートのところ。
✂️ ニューフィクション 川瀬あやめの持ち替え - YouTube
茜空ちゃんの歌う背後から、眼力つよい川瀬あやめちゃんが左手を振り下ろすの、見えますよね。
そう、左手なんですよ。「左手でなにかやってる!」ってだけで、持ち替えのオタクはスイッチが入ります。
ここ、持ち替え状態になっているのは、この手を振り下ろす動作1つだけなんです。たったこれだけのために右に持ち替え、おわったらまたマイクを左手に戻してる。しかも左手を出すのは、あやめちゃんだけです。残りの4人はみな、持ち替えずに右手を出してる。
ニューフィクションは撮可の動画がYoutubeにいっぱいあるので、気になる人は確認してください。正面付近から撮影されたものがあったので、置いておきます。
✂️ ニューフィクション あやめ持ち替え(正面) - YouTube
「なんで?」って思いませんか?
「そこ、あやめちゃん持ち替え必要なの?」って。「なぜ、あやめちゃんだけが?」って。こういうのをめちゃめちゃ考えるんです僕は。
これ、結論をいうと、「お客さんから見えるように」です。
このロングトーンパートのあと、次のユニゾンで横一列に並ぶとき、あやめちゃんは空ちゃんのひとつカミテ側に入ります。
それを見越して、ロングトーンのときには、あやめちゃんは空ちゃんの真後ろにカブらないように、真後ろよりややカミテ側に立つ。上の動画でも、空ちゃんの左足あたりにある、ゼロ(ステージ中央)を示すバミリから確認できます。手を振り下ろす直前の倒れ込む動作も、カミテ側へ顔を出すようになってる。
なので、振り下ろす腕は、カミテ側から出す左手にしたほうがいい。右手を振るのでは空ちゃんの後ろに隠れてしまう。
たぶん、そういう理由で設計されてるんだとおもう。
ukkaというグループは、そういうところにも配慮を持って、振付や見せ方を作っている。この持ち替えはそれを垣間見れる良い例だと思います。
持ち替えを観察していると、たまに、思いもしなかった何かにたどり着いたりします。「持ち替えてる、ってことは、何かのこだわりがあるはず。」と意識することで、なにかが見つかることがあります。
もう一個いきましょう。これは、前のやつほど確かな答えに行き着いていないけれど。
Just mean it!(ばってん少女隊)の、
りるみゆの右持ち歌唱「涙したらもう揺るがない~」のところ。
✂️ Just mean it! りるみゆの持ち替えソロ - YouTube
これって、どういう理由でふたりは右持ちなんでしょうかね。
直前の愛ちゃんパートはみな左持ちで踊ってるので、この歌唱パートの場面のために持ち替えを行った、というのは確かです。
深い意味はないかもしれないけど、しいて理由を考えるなら、ここでは、りるあちゃんがみゆちゃんの肩に手を置く絵をつくりたかった、ってことでしょうか。ここはこのポーズで、りるみゆにキメキメで立ってもらう、っていうプランなのかも。
もしそうだとしたら、このパートの今後がたのしみです。りるみゆの二人が、今よりもっとバチバチのオーラをその身に纏うようになったとき、このパートは化ける、そう期待したくなります。
…と、そんな深読みをしだしちゃうのが持ち替えの沼です。
深読みや妄想のネタが、持ち替えの世界には転がってます。「もしかして、そういうことなの?」と気づくと、その場面への思い入れが強くなる。「ここを見たい!」って思えるものが増えてく。
ここまで講座についてきてくださったかた、
こんなに持ち替えばかり見させられたら、さすがに少し目が慣れてきているはずです。
あれっ?と思うような、意図の掴めない持ち替えを偶然みつけたときは、なぜそうするのか考えてみてほしいです。なにか、見つかるかもしれないです。
さて次回は、
「踊りながら歌うために行う持ち替え」についてです。
右手左手を駆使する振付を踊りつつ、歌う。そのために歌唱の途中に持ち替える。
踊り、歌、持ち替え、の3つを同時にこなす、やばいやつです。アイドルってすげぇな!ってなる。
(2023/04/06 追記)
第4講、書きました。こちらからどうぞ。